西方徘徊 048:QUEEN 『The Miracle Game』 1981年2月16日武道館
で、今回はその中から一発。1981年、武道館でのみ計5回行われた4度目の来日ツアーの3公演目、2月16日の演奏をステレオ・オーディエンス音源にて完全収録したタランチュラ・レーベルの新作です。
初来日から6年、相変わらずな黄色い嬌声に加え、この頃はメンズの歓声もかなり増え、ノッケからそれはもう凄い盛り上がりよう。改めてバンドと日本のファンの蜜月ムードの健在ぶりを実感しますが、と同時に当時の最新作『ザ・ゲーム』(&サントラ 『フラッシュ・ゴードン』)を境に徐々にクイーン離れを始めた自身のことも思い出しちゃいました(けどラスト作収録の「Show Must Go On」なんかは今聴くとえらく胸に響きます)。
その『ザ・ゲーム』と『フラッシュ・ゴードン』の2作は”No Synthesizer”の誓い?を解いたとしてバンド史上の変節を伝える作品ですが、この時のツアーもそんな作風を反映してか、時折”らしくない”シンセ音が飛び出したりします。で、今もって僕はそこに違和感を覚えてしまうのですが(ファンクやソウルに接近し始めた当時の”新機軸”にも馴染めませんで。あとフレディはやはり長髪がイイでしょ、なんてまるで女子な発言)、演奏の勢いに衰えは全く見えず、特に前半の捲くし立てるような目まぐるしさや、終盤のドラマチックな展開はやはり強力。 特に掉尾を飾るに相応しい名曲「伝説のチャンピオン」の存在はやはり大きく、これが流れ出すとそんな細かな物言いモードもどこかへ飛んでいってしまうというか。
音質の方ですが、レーベルきっての腕利きテーパーによる音源提供だけあって実に素晴らしい、文句無しのクオリティに仕上がっています。特にスネア・ドラムやベースの音にしっかりと芯があるので、全体の音が締まって聴こえますね。AUD音源のブートは兎角ベースの音が細くなりがちなんですが、この点をクリアしているのは本盤の大きなアドヴァンテージだと思います。しかしこれ会場のどのあたりで録音されたものなのか、楽音はまるでアリーナ前方で録ったような近さで捉えられている上に、曲中のカットや目立った乱れの無いところ(強いて言えばオープニングSEにややノイズが乗っていること位でしょうか)も実に嬉しい。
西方徘徊 047:SIMON & GARFUNKEL 『Perfect Moment』 2009年7月10日東京ドーム
これショップインフォの一部転載です(苦笑)。んなものは所詮、という向きもあるでしょうが、ここんちのそれはいつも”出来るだけフェアな内容を”、との思いが伝わってくるもので、僕自身は随分と購入時の参考にさせてもらっています。
で、今回はこれがドンぴしゃ、たったの7行で実にお見事(見習えよ^^;)。
あの東京ドーム特有?のぼわんとしたホール感。拍手と歓声がまるで引いては寄せる波のような?残響を伴いながら鳴り響く様子まで見事にとらえています。なのに演奏や歌はまるで眼前で鳴っているかのような近さ。全ての楽音にふくよかさと暖かみを感じる、これはもう是非大きな音で聴きましょう、という感じのすこぶる高品位なソースだと思います。
という訳で、今回のツアーを体験された方、中でも7月10日の公演に参加された方、オメデトウございます。他のタイトルを聴かずに言い切ってしまいますが、最強のメモリアル盤の登場です。開演前に流れた映像のBGM「アメリカ」のフェイド・インから、終演後のジョージ・ハリスンの「美しき人生」、そして”只今をもちましてコンサートは全て終了いたしました・・・”のアナウンスまで、曲中の欠け、耳障りなオーディエンスノイズ一切無しの完全収録。実に素晴らしい。※【訂正】いやありました、AUDノイズ。本編ラスト「明日に架ける橋」の演奏後、興奮気味に話す女性のそれがちと耳障りかと。
ところで、以前ココにS&Gのライヴに対する凝り固まった思い込みなんぞを書き散らかしたことがありますが、このブートを聴くと、今回のツアーは原曲のムードを崩さずにプラス・アルファ(こんな味付けなら大歓迎、な後半の拡大アレンジが素敵な「Homeward Bound」、意外な選曲「Not Fade Away」へと流れる「Mrs. Robinson」など)との狙いがあったことは想像に難くなく、それが僕にとっての感動の素になっています。けれど一方で、この極上音源はライヴに足を運ばなかったことを強く後悔させる。だってコレ聴いて何度鳥肌が立ったことか、おまけに不覚にも胸にこみ上げてくる瞬間まであったりして(その場にいたら泣いてるね、きっと)。ちょっと塩辛さが混じったアートの声、独自の節回しを織り交ぜるポール、そしてあのハーモニー、アコギの調べ、あるべきところにある転調、音色、ソロのメロディ(R.I.P. Mr. Michael Brecker)などなど。
ふぅ。
個人的に特にグッと来た曲をいくつか折り返しの向こう側(苦笑)に貼り付けたので、よかったら聴いてみて下さい(感動的な「明日に架ける橋」をトラック・タイムの都合でUP出来なかったのが残念)。
西方徘徊 046:RAINBOW 『初陣 Uijin'』 1976年12月2日 東京体育館
『雷神』、『風神』に続き、タランチュラ・レーベルからレインボー1976年初来日公演の3作目『初陣 Uijin'』がリリースされました。その名の通りツアー初日12月2日の東京体育館公演を収録。メーカーのインフォによると『風神』と同じテーパーがアリーナで録音したとのことですが、上のような状況の中、一体どこでどのようにして録ったのか、その点についても興味が尽きません。音質は明らかに低域がオーバー気味でバランスを欠いているものの、私的にはそれが聴き辛さよりも迫力と聞こえるところが嬉しい。
西方徘徊 045:THE WHO 『Dancing In The Stockholm 1966』
盤の仕様(プレス or CD-R)や音質の良否にとらわれ選り好みをしていると素晴らしい演奏や貴重なドキュメンタリーなんぞとの出会いを逃してしまう、それはイヤだと例外的にCD-Rでも躊躇せずに買い、(これはちょっと主旨が違うけど)既に手元にある音源なのにちょっとでも違うところがあれば買い、(これは全く違うけど)ジャケの色違い版が出れば買う等々。もう20年来そんなアホなことになっていた(それでも逃してるブツは結構あるんですが)のがザ・フーの、特にキース・ムーンがいた頃のブートです。
で今回ですが、仕様はCD-R、音も決して良いとは言えない、けれど初期ならではの性急さや勢い、モータウン・ナンバー中心のカヴァー曲と既にスペシャルの域に達しているピートのソングライティング力=オリジナル曲の鮮やかなコントラストが味わえるアイテムが登場しました。
収録されているのは、1966年のスカンジナビアツアーからストックホルムでの2度の演奏。6月2日、土砂降りの野外コンサートだったというGrona Lund公演と10月25日のClub Nalen公演からそれぞれ8曲ずつ収録。データ本『The Who Concert File』を見ると、どうやら両日共に当日のセットリストを(音欠けはあるものの)全て収録しているようです。
自分達流に料理したカヴァー曲、モータウン以外にはキースがアヤシイファルセットを聴かせるビーチ・ボーイズの「Barbara Ann」やオーティス・ブラックウェルの「Daddy Rolling Stone」といったところ。ちなみにキースはこの6月2日のライヴで初めてツーバス=2個のバスドラムを使ったんだそうです。
そんな初期ならではの選曲を楽しめるドキュメンタリー性も然ることながら、個人的には10月公演後半のオリジナル曲「So Sad About Us」「Substitute」「The Kids Are Alright」「I'm A Boy」「My Generation」の畳み掛けが白眉。
で、音のコンディションはと言うと、ビートレッグ誌8月号のレビューにある ”音の途切れがどうとか言っている場合ではなく、これこそロックの熱い勢いを感じられるライブサウンドを楽しめるという代物” に同感しつつ、ハナシはここで冒頭の ”音質の良否にとらわれ~” に繋がる訳ですが、まぁ簡単に。
6月2日 Grona Lund公演 : 音デカかったんだろうなぁと思わせる割れたノイジーな音。客のチャット多し。M5以降の4曲に音揺れ(回転ムラ?)多し。全体的に不安定なソースなれどバンドの像は捕えられていて、中でもヴォーカル(含むコーラス)は割合クリア。欠落なく収録されているのは8曲中「Uptight / Daddy Rolling Stone」とピートが歌う「A Legal Matter」の2曲。
10月25日 Club Nalen公演:距離を感じさせるソース。ベースの音中心にノイズ感強し。チャットは気にならないレベル。最も不安定な「Dancing In The Street」を境に音ムラは減少。”ほぼ”カット無しで聴けるのは「Barbara Ann」「So Sad About Us」「Substitute」「The Kids Are Alright」「I'm A Boy」と「My Generation」の6曲。
と瑕疵をあげつらうつもりでなくてもこんな風に書かざるを得ない音質的にはキビシイソースですが、演奏は素晴らしい。尚、このブートに使われている写真はどれも当日撮影されたものだそうです。
↑がGrona Lundで、↓がClub Nalen(凄いね)とのこと
西方徘徊 044:SIMON & GARFUNKEL 『Eastbound』 1982年大阪球場
終わっちゃいましたね、サイモン&ガーファンクル(以下S&G)16年振りの来日公演(ハナシが古い)。
僕が洋楽をそれと意識して聴くようになったのが小学6年生の頃。母親のすすめで聴いたカーペンターズをきっかけに、その後まず夢中になったのがビートルズとサイモン&ガーファンクルでした。初めて買ったシングル盤も彼らの4曲入り33回転EPだったと記憶しています(「明日に架ける橋」「アメリカ」「コンドルは飛んでいく」「ボクサー」の4曲だったかしらん)。
そんな出会い方をしたS&Gですが、実はナマの彼らは未体験。いわゆる"ROCKな"バンドやアーティストならライヴ参戦も醍醐味のひとつですが、僕にとってのS&Gとは例えば部屋で夜ひとりしみじみと聴くもの(そんな曲ばかりじゃないですが)というか、時代の空気や心象風景をも取り込んだような独特な質感の音、あっさりしている様で実はかなり練り込まれているサウンドプロダクション、例えば楽器の音色やアレンジの妙といったものはレコードで聴いてこそ深い滋味をもたらしてくれる、というメンドウな思い込みがありまして。だからライヴ用のアレンジで化粧された曲をすすんで聴く気にはイマイチなれないというか。
そんな思いを更に強めたのが実はあの81年9月19日の『セントラル・パーク・コンサート』の映像だったりします。50万人以上もの人が集まったという歴史的なコンサートで、もちろん2人が再びステージに立ってくれたという事実はとても嬉しい。初めて観た時は歌がどうの以前に二人が顔を見合わせた時の表情とか所作とか雰囲気とか、まずはそんなところに気を取られていたことを思い出しますが、音の方はスタジオ版とは切り離して聴くべしというか、あるべきところに無いハミングとか、大仰なギターソロとか、ジャズ風に崩したピアノとか・・・。何だかシャラクサイすね(苦笑)。
が同じライヴと言えども、例えばそれが弾き語りでとなると話は別で、まるでパーソナルな関係性をこちらに求めてくるような”生身な音”に最も適したスタイルなんじゃないか、そんなことを改めて実感させてくれたのが先月国内版が出た『ライヴ1969』と2007年の暮れにリリースされた『ライヴ・フロム・ニューヨーク・シティ 1967』です。前者ではバンドの演奏をバックに歌う曲もありますが、レコーディング時のメンバーのサポートゆえアルバムの音と地続き感があるし、まして全編弾き語りで展開される後者についてはもう言わずもがな、という感じ。
とそんなことを言ってるくせに、今回取り上げるのが82年の初来日ツアーからの流出音源、5月8日大阪球場での2日目公演を収録したブツなのは何でだ?(苦笑)。コレ5月下旬にLHから出たタイトルですが、『セントラル・パーク・コンサート』から約7ヶ月後の演奏なんですよね。なのでメンバーも各曲のアレンジも大きな変更は為されていません。