BAD COMPANY 『Little Miss Fortune』 1975年3月3日 武道館

それ以外にはシングル3枚のB面曲(「Easy On My Soul」はフリー期のアルバム『Heartbreaker』収録曲のリメイク)とフリー時代の「The Stealer」という曲布陣ですが、シンコペーションを効かせた王道的ハードロックから始まり、ファンク臭漂うヘヴィなナンバーあり、軽快なシャッフル・ビートあり、牧歌的ムードを醸し出すミディアム・バラードあり、トラディショナル風味の弾き語りあり、といった具合にリズムやムードのバリエーションがとても豊富だったことに改めて気付かされます。それだけに後半ノリノリで攻める「Movin' On」以降の畳み掛けが実に効果的。先のデビュー前の音源と比べるとライヴの流れ自体も進化していることが分かります。
西方徘徊 055:BAD COMPANY 『Newcastle 1974』 1974年3月8日 英ニューキャッスル
今回は先日のバドカンのおまけを貰う時に買ったバドカン。
先月の再結成音源から時を遡ること35年。1974年3月8日、英ニューキャッスル公演をステレオ・サウンドボード録音で収録。2003年頃、CD-R仕様で一度世に出た音源(タイトルは同じ『Newcastle 1974』)ですが、今回プレス仕様での再発と相成りました。
1974年といえば彼らのデビューの年。が、ここで聴けるのはどうやらデビュー前の演奏らしい。
1曲目、デビュー・シングル「Can't Get Enough」B面曲(アルバム未収録)の「Little Miss Fortune」がカットインでの収録になっている以外は然したる問題も無く、個人的にはボトムの効きが弱いやや腰高な感じを受けますが、分離の良さやクリアさはさすがライン録音。各パートのバランスも良好です。
もれなく付いてくるボーナスディスク(1CD-R)には、1999年7月にオハイオ州クリーヴランドで行われた”Rock And Roll Hall Of Fame”での再結成アコースティック・ライブが74年ソース同様、高音質なステレオ・ライン録音で収録されています。冒頭が観客へのインタビューになっていることから放送音源ではないかと思いますが、各パートのバランスがよく、45分強と比較的短い内容ながらもなかなかの聴き応えです。
西方徘徊 054:JEFF BECK 『Royal Albert Hall 2009』 2009年7月4日ロンドン
今年7月4日に行われたジェフ・ベックの英国ツアー最終公演、於ロイヤル・アルバート・ホール in ロンドン。この日の音源は元ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアとの共演が聴けるとあって、せひともブツとして手元に置いておきたかったんですが出るのはどれもCD-R仕様ばかり。それを横目にどこぞかがプレスで出してくれないものだろうか?との望みを先日BFが叶えてくれました。
店頭の手書きPOPにはネット落としではない云々とあったのでどうやら独自のルートから入手したソースのようです。メンバーがステージに登場する直前からの収録になっていて、ミドル部分のリズムを変えてきた1曲目「Beck's Bolero」から「Where Were You」の演奏後、思わず頷いてしまう一人の男性客が叫ぶ”Beautiful!”からベックのMCまで正しく完全収録。近頃のAUDソースはノイズもカットも無く安心して聴けるものが多いですが、これもそんな仕上がりになってますね。
音の方はホールの残響が目立つものの決してイヤな感じではありません。ギターの音もよく聞こえているし、リズム隊の迫力もナカナカ(キーボードがややオフ気味ですかね)。気になる低域の歪みはちょいとアヤシイところがあったりしますがまあOKでしょう。
ところが、終盤のギルモアとのジョイント部分がミョーなことになっていて、左CHのギルモアのギターが、まるでイヤーモニターかサウンドボードソースのようなバキバキにコントラストが効いた音になっているんですね(店頭のPOPにはミックス音源とは書かれていなかったと思います)。おまけに入力レベルが一人だけやけに高いので、そこが不自然(ヘッドホンで聴くと余計そう感じます)。
ところでその「Jerusalem」はWikipediaによれば ”18世紀イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの長詩「ミルトン」(Milton)の序詩に、同国の作曲家サー・カールズ・ビューバード・パリーが1916年に曲をつけた合唱曲” なんだそうで。僕なんぞはついEL&P版(「聖地エルサレム」)を連想してしまうんですが、この曲でのベックのプレイはそれはもう見事なもので(一方のギルモアはおそらくリハ不足のせいだと思いますが、ちと怪しめ。それでも ”ザ・フロイド” な音は十分魅力的ですが)、近年クローズアップされてきた ”ロマンチックなベック” 全開といった感じ。それだけにギルモアとの音量バランスの悪さが惜しいのですが、この曲が目当てでプレスに拘らないのなら他レーベルのタイトルをチェックされた方が良いかも知れません。※例のMP3Tubeは曲時間が長いので2分割にしてあります。
2曲目の「Hi Ho Silver Lining」ではスティーヴ・ウィンウッド、アンディ・フェアウェザーロウらとの共演となった、この日と同じロイヤル・アルバート・ホールで1983年に開催されたARMS Concertでのバージョンを思い出しますが、この日のベックはリード・ヴォーカルをギルモアとシェア(1コーラス目:ギルモア、2コーラス目:ベック)、そこへイメルダさんがコーラスとして華を添えるといった具合ですが、いかんせんこの音源では残響派?のベック以下4名 vs バキバキ一人大音量のギルモアという構図になっているため歌がよく聴き取れません。
で、そのイメルダさん。不覚にも今回初めてこの人の歌を聴いたんですが、良い意味でのたゆたうような歌声が印象的ですね。ロカビリー界のシンガーらしいのでこれがこの人にとってどんな位置付けの曲なのか分かりませんが、ともあれ、以前共演したイモージェン・ヒープといい、この人といい、ベックの女性ヴォーカルへの好みが窺えるようではあります。ちなみに9月21日にはロンドンのO2にてベックとイメルダ・メイ・バンドとのジョイントライヴがあるもよう。
西方徘徊 053:BAD COMPANY 『Performing Star』 2009年7月4日ニュージャージー
72歳:ビル・ワイマン 69歳:リンゴ・スター、ジンジャー・ベイカー 68歳:チャーリー・ワッツ 67歳:ポール・マッカートニー 66歳:ミック・ジャガー、ジャック・ブルース 65歳:ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、キース・リチャーズ、ロジャー・ダルトリー、ロジャー・ウォーターズ、ニック・メイスン 64歳:エリック・クラプトン、ピート・タウンゼント 63歳:デヴィッド・ギルモア、ジョン・ポール・ジョーンズ 61歳:スティーヴ・ウィンウッド、ミック・ラルフス 60歳:ロバート・プラント、サイモン・カーク 59歳:ポール・ロジャース…
こんな書き出しをしてしまうのはこのところ立て続けに舞い込んで来る訃報のせいだきっと。ちなみに英国人男性の平均寿命は76.7歳なんだそうな(日本人男性は78.7歳)。あえて書くような事じゃないだろ、との誹りを受けるかも知れませんが、好奇の気持ちなんぞ全く無いわけで、この先十数年の間に一体僕はどれだけの訃報に接することになるんだろう、などと考え始めると何ともやりきれない。
そんな将来に対する募る寂しさに対抗しうるものとは一体? たとえ死んでも音は残る、確かにそうだとは思うけど、それが未来のことであるなら、そこには決して前向きになれない諦念がつきまとう。
なら例えばバンドの復活劇なんてどうだろう?新作のリリースまでは求めないからせめてライヴを。老練な楽器弾きが再び集まりかつての曲々を共に演奏する。それが単なるノスタルジアに終始することなく(例えそうだったとしてもそれが悪いこととは限らない)いまの音として興奮と感動を与えてくれるなら。
でこの際極論しちゃうと、”主”たるメンバーが中心になるもので、もしもその可能性があるのなら全てのグループが再結成してくれればいいと僕は思ってます。 過去の栄光とやら、昔のあのコーフンをまた味わいたい、でもって大金が懐に転がり込んでくるなら益々ケッコウ。再結成による活動が僕らの感動やチカラに繋がってくれるのなら、それの何が悪いことか。まぁ実に短絡的な発想だとは思うけど。
そんなことを書きながら思い浮かべていたのが実はレッド・ツェッペリンだったりするんですが、あのO2アリーナからもう1年8ヶ月が経つんですね。おそらく多くの人が胸いっぱいの期待、いや期待半分不安半分で迎えたであろうあの日の演奏は(僕の場合もちろんブートを通じてですけど)実に複雑な聴後感を残しました。予想以上に良かったじゃないか、という思いと共に言いようの無い欠落感があったのも事実で、僕にとって最も大きかったのはやはりボンゾ不在によるそれ。往年の頃と比べればディスク1枚分短いセットでしたが、フェスなどへの即席的な参加と違いフルスケールのライヴだったから尚更そう感じたんでしょうが、”レッド・ツェッペリン”という名のもと、あのバンドサウンドの構成要素として絶対的な存在を補うことは腕の立つ息子にだってやはり困難だった訳で(生きていたら今どんなドラムを叩いていたでしょうね)。
何やらハナシがさんばらばん(なぜか丹波弁)になってきました。
西方徘徊 052:THE WHO 『Providence 1975』 1975年米プロビデンス
極上の高音質で驚かせてくれたクイーンの『A Night At Boston』と同じ録音者によるザ・フーの初登場音源が待望のプレスCDでリリース。ザ・フーのライヴ音源75年モノ、といえば高音質ソースが豊富なことで知られていますが、今回そこに名音源がひとつ加わることになりました。
74年6月に行われたマディソン・スクエア・ガーデンでの4度のショウ(10, 11, 13, 14日)を最後にザ・フーとしてのライヴ活動を事実上休止していた4人は、 75年4月からセッションを始めていた新作『Who By Numbers』の母国での発売日の10月3日、スタフォード・カウンティ・ショーグラウンドに完成した8,000人を収容するニュー・ビ ングリー・ホールのこけら落とし公演(翌4日との2デイズ)よりロードに復帰を果たします。計11公演となったその英国ツアーを終えた後すぐにヨーロッパ・ツアーへ。そこで計9公演をこなした後、11月20日のヒューストン公演から、翌76年10月21日のトロント公演まで続く長期の北米ツアー(計4期に分けられたツアーで、途中何度か欧州での公演も行われています)へと繰り出します。
今回リリースされたタイトルはその第1期北米ツアーの18公演目、ロードアイランド州プロビデンスにあるシビック・センターでの演奏(聴衆14,000人)を収録。この時のツアーは3月に公開された映画『トミー』のヒットからその楽曲が増え、結果、前作『四重人格』の曲が姿を消してしまいました(ツアー初期に数回だけ「Drowned」を演奏)。また、『フー・バイ・ナンバーズ』からの曲も次第に整理され(「However Much I Booze」も初期のみの演奏)、このプロビデンス公演ではツアー終了までほぼ固定となったセットの最終形を聴くことが出来ます。