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西方徘徊 116:PETER FRAMPTON 『Frampton Comes Arena!』 1978年10月25日 武道館

いやもう甘酸っぱいったらありゃしない。

アンコールに応え最後に演奏される「アイム・イン・ユー」。

ピアノのイントロが鳴ると同時に湧き上がる大歓声はかなり黄色混じり。そんな声色を除けば、客が歌詞の一句一句に強く反応する様はまるで海の向こうでのライヴを聴いているみたい。

かつてアイドル視されることを嫌いバンドを飛び出した彼はその9年後の1978年、ここ極東の地で凄まじい程の嬌声を浴びていた。

"Hello Tokyo! Please welcome for the first time in Japan. PETER FRAMPTON!!"

メガヒット作『フランプトン・カムズ・アライヴ』よろしくドラムスの軽快なフィルインから「Something's Happening」が飛び出すかと思いきや、意外なことにアコースティックセットでの幕開け。それを突風のように訪れた二年前の成功劇から幾分気持ちも落ち着き、やや距離を置き始めた彼の心情の現われと見るか。

Peter_Frampton.jpg

『フランプトン・カムズ・アライヴ』は僕が本格的に洋楽を聴き出してから程無い頃に日本でも大ヒットしたライヴアルバムで、当時は音楽雑誌やラジオで彼に関する話題や曲を耳目にしない日はなかったと言っても大袈裟でないくらい大いに盛り上がっていた記憶があります。

まるで米西海岸産のような底抜けに明るいメロディとサウンドアレンジ、そして甘いヴォイス。アルバムからの第一弾シングルとしてリリースされた「ショー・ミー・ザ・ウェイ」なんぞその典型ともいえる曲で、ご多分に漏れず当時中学生だった僕もそのシングル盤を買い、夢中になって聴いたものです。

であれから34年。それがメジャーであればある程気持ちの中で錆び付いてしまったり風化していってしまう中、この曲はいまだに聴けばワクワク、を実感させてくれるいわばココロの名曲として自身の中に刷り込まれているんですよね。


さて、今回取り上げるブートはちょうど1ヶ月前にタランチュラレーベルがリリースしたもので、78年の初来日公演から10月25日の武道館公演を完全収録。音質もその距離感といい、バランスといい、申し分の無い仕上がりになっています。

comes_arena.jpg

音源提供者はこれまでにも様々なタイトルでその職人的な音の仕上がりを楽しませてくれた桃印なお方。他の音源をろくに聴かぬまま言っちゃいますが、フランプトンのAUDライヴソースでこれに勝る音源は無いと言っていいんじゃないでしょうか。

『フランプトン・カムズ・アライヴ』に馴染んでいる耳で聴くと、この日の演奏は全体的にややラフな印象。そこが却って面白く聴けるというか、まぁレコーディングされていた訳でなし、ファンの熱狂的なムードの中のびのびと演奏を楽しんでいる姿が音から伝わってきますが、MCではあえて平易な言葉を選びゆっくり話すなど、丁寧なサービスっぷりが印象的でもあります。

そして改めて思うのが音楽へ向かうスタンスの屈託の無さ。明るい曲調からそう感じる部分が大きいとは言え、例えばドゥービー・ブラザースへのリスペクトをストレー トに表現した「Doobie Wah」や王道的なモータウンナンバーのカバーに代表されるアメリカン・ミュージックへのアプローチにもそれがよく現われている気がします。

個人的には全編聴きどころといった感じですが、その中で強いて選べば、彼がハンブル・パイ、中でもイミディエイト期とA&M移籍後の『大地と海の歌』に持ち込んだトラディショナル・フォークの残り香を感じさせるインスト曲「Penny For Your Thoughts」(邦題「空白の時間」)やポップの権化のような「Something's Happening」と「Show Me The Way」。

こんなポジティヴな心情を持ち前の明るいキャラクターで演奏する、言ってみればそんな嘘のないスタイルをアピールしながら全米中の人気を獲得していったんだろうな、ふとそんなことを思わせる「I Wanna Go To The Sun」。あのジェフ・ベックからトーキング・モジュレーターを取り上げた(正しくは真似されて使うのがイヤんなっちゃった)曲としてもベックのファンに知られている(それでも僕は大好きですが)「Do You Feel Like We Do」(邦題「紫の夜明け」)。

そして冒頭に書いたように来日を待ちわびていた日本のファンとの濃ゆい交感が聴ける「I'm In You」ってとこでしょうか。
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たどん

Author:たどん
神奈川県在住
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誕生星座:山羊座(たまに射手座)
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